

坏土(つち)、釉薬、薪、顔料などへの徹底したこだわり。そして、最高水準の仕事を遂行するための高度な分業体制。1753年(宝暦3年)の築窯より源右衛門窯では、有田の伝統技法を用い一品一品をすべて手描きで仕上げています。その繊細にして艶やかな作品は、大英博物館の館蔵品にもなり、またローマ法王来日時における晩餐会の器や献上品にも選ばれるなど、国内外で高く評価されています。

山懐に抱かれた有田で古伊万里の心を受け継ぐ源右衛門窯
源右衛門窯の魅力は、初期伊万里のもつすなおさと伸びやかさ、欧州の王侯貴族を魅了した輸出伊万里の絢爛さと重厚さに加え、闊達な筆遣いのなかに重量感と艶を盛り込んだその作風。さらに、古伊万里の伝統文様に、時代の感性を取り入れた独創的な磁器づくりもまた魅力の一つです。この進取の精神がデコールセイコーと源右衛門を出会わせ、時計として磁器として、互いの魅力を最大限に引き出した作品へと結実しました。

職人がしのぎを削る源右衛門窯の細工場(さいくば)
轆轤(ろくろ)から窯焚きまで、幾人もの専門の職人が練達の技をふるい、ひとつの作品が生み出されます。

磁器の轆轤は陶器に比べ、力加減が難しく、精度と薄さが求められる極限の手技の世界。永年土と語らい、身体が覚えた微妙な感覚だけを頼りに仕上げてゆく姿は、築窯の頃から何ひとつ変わりません。

火入れから焚き終わりまで2日間。その間、不眠不休で気温、湿度、風の強さによって薪の量や入れ時を調節する作業は、まさに経験と勘、そして忍耐の世界。

轆轤を経て素焼きされた器に、本焼きで美しいブルーに発色する呉須(ごす)で文様を描く作業。均一の濃さで絵柄の輪郭を引くのは至難の技。さらに内側を塗りつぶす“濃(だ)み”という工程を経て仕上げられます。

染錦と呼ばれる多彩色の器は、本焼きした器に修練を重ね、絵心を磨いた職人たちが赤・黄・緑などの和絵具で艶やかな彩色を施し、低温でさらに焼成して仕上げます。
(AZ202A、AS202A、AZ736A、AZ737A)
菊は延命長寿の霊草として、牡丹は百花の王ということで中国古来より珍重され、古伊万里の画題としても代表的な「菊牡丹」の文様です。素焼き、藍色の絵付け・透明釉薬を施してからの本焼き、最後に赤・黄・緑などで彩色して焼き上げて仕上げます。

欧州の王侯貴族をも魅了した艶やかな色絵
(AZ202M、AS202M)
東洋を代表するやきものといわれる青磁。有田でも創成期よりさまざまな青磁が試みられてきましたが、なかでも青磁と染付を組み合わせる表現は高度な技術を要する技法です。初期の有田青磁を思わせる渋い黄緑色と精密な筆致で描かれた染付獅子唐草文が、穏やかで品格のある対比をみせています。

高度な掛け分け技法に華を添える
(AZ737Y)
オスマン・トルコの時代に造られ、イスラムの華とも謳われるイズニク陶器。その文様を源右衛門窯の感性で捉え、表現。古来より豊穰の意味を持つ吉祥文として用いられてきた「葡萄文」を、染め付けの藍と黄色で色鮮やかに描いています。

上絵付けならではの立体感のある仕上がりの葡萄文
(AZ736M)
源右衛門窯の「ミナイ手シリーズ」と呼ばれる釉上多彩磁器に、エキゾチックな兜唐草文様を施しました。「ミナイ」とはペルシャ語でエナメルの意。光沢のある上絵付けのことで、12世紀頃のイスラム陶器にその源流を見ることのできる技法です。

日本の唐草文様のルーツともいえる